目次
●0/価値付加
あるものを付加することによって別のあるものに影響を与える。これを価値付加という
ここにおいての価値とは、後付けの価値であり、最初から価値があるものではない。あるものが影響を与えたのであるならば、そこで初めて価値といえるのである
不要物付加の低価値効果/価値付加の哀情減少効果
/a 不要物付加の低価値効果
:×○×⇒うれしくない
: ○ ⇒うれしい
○は嬉しいこと、×は嬉しくないことを指している。上記の例は、○を取ろうとしたら×もセットで付いてくる状況のみにいえる。つまり、余計なものが入っているから価値が下がる。もし単体なら、結果は逆になる。この効果と同じ原理の効果が下の(b)である
/b 価値付加の哀情減少効果
一回だけの挑戦でその一回が失敗なのと、たくさんの挑戦の中で一つだけ失敗なのとでは失敗の重みが違う
: × ⇒うれしくない
:○×○⇒悲しさ減少
同じように、一回のチャンスをものにするのと、複数のチャンスの中でものにするとでは、嬉しさは前者のほうが大きいのではないだろうか
外的付加価値
外的要因によって付加価値を付ける
(例) 普通の部屋でも、窓を開けて外から若い女の子同士の会話が聞こえてきたらその部屋の価値は上がる
工夫のユートピア
手を加えることで理想の環境を作り出す。ある石油会社は市場を開拓するために中国の農村部に無償で石油ランプを提供した
具体性の正当効果
具体的な理由があれば正当性が高まる。相手をもっともだと思わせることが大事。単なる否定や断りでは納得しないでしょう
a お願いするときは必ず理由をつける
例えば、ので話法(“話法”)を応用する
何かを頼むとき、「理由+ので」は承諾率が高くなる。理由は何でもよく、重要なのは「ので」を付けることである
(例) 「すみません、五枚だけなんですけど、コピーをとらなければならないので、先にコピーとらせてくれませんか?」
●1/ブランド効果
ブランドが人に与える効果について
・ブランドとイメージ
欺きと正統の境はあるのだろうか。ブランドによるイメージの植え付け、商品の本来売価の二倍の価格を設定しておいて値下げし、本来売価で売る。商品の価格しか見ていない。その商品が本当にその価格に見合っているのかをよく考えない
●2/責任付加
責任を付加することによってもたらされる効果について
責任効果
責任はどのような効果をもたらすか
責任は、把握・精製心・責任感・承諾率・執着・モチベーションの向上をもたらす
a 責任の責任効果
責任付加は自分の行為に責任を持たざるを得ない心理になる
b 自己管理の責任効果[自己管理のモチベーション効果]
自己管理はモチベーションを高める
責任付加
どのようにして責任を付加するか
a デートのプランを相手に決めてもらいリードさせることで責任感を強くする。そのうち、気に入ってくれたかな、という気持ちが相手に起こる場合がある
b 相手に、自分が相手をコントロールしていると思い込ませる=責任を生ませると、承諾させやすくなる
c モチベーションを上げる
d 名前付加の理解効果
物に名前を付加することによって、責任と執着を向上させることができる。これを名前付加の理解効果という
内容をよく把握することができない場合は、それに名前を付けてみる。名前を付けようとすると、そのものをもっとよく考えるようになる
e 最後の責任感
事の最後には往々にして責任感が強まる
e-例 最後にして、大トリという言葉を使い相手に責任感を与える
f 恩義を着せることで責任感を生ませる。そして感謝する
f-例 「僕の~は君が作った。ありがとう」
●3/努力
努力を付加することによってもたらされる効果について
・努力承諾
自分が努力をしていることをアピールすることで、相手に「相手が頑張ってくれるんだから自分もちゃんとやらなくちゃ」と思わせる。これは一例に過ぎない
・努力話法
努力したけどできなかったような言い方は非難されにくい。これを努力話法という
(例) 「上がってないです」⇒「上がらなかったです」
●4/意外性
意外性がもたらす効果は二種類ある
意外性の好意効果
相手に対しての親切に意外性を付加することによって相手により好意を抱かせる
(例) 「君の分のコーラも買ってきてあげようか?」と言うより、「のどが渇いたからコーラ買って飲んでくるね」と言って出て行ってから、戻ってきたときに「君の分のコーラも買ってきたんだけど飲む?」という言動のほうが相手はより好意を抱きやすいと思う
好意の意外性を有効に使うためには、自分で発生させそれを拾うことである。つまり“誘導[示唆/誘発]”と密接な関係がある
意外性の承諾効果
突然の要求は承諾を引き出す効果がある。例えば、電車の中で「すみません。席を譲ってくれませんか」と言って既に座っている乗客を驚かせた場合、誰かに席を譲ってもらおうと思っていることを一緒にいる友人に話すことで前触れを与える場合よりも、実際に譲ってくれた人が二倍になることを明らかにしている
●5/否定と批判
否定や批判が生み出すものについて。また、反対・相対の性質について
否定の弊害
先から否定的だと、良いものも見えない。これを否定の弊害という。どんな事に対しても、否定感情を持たず、まずは受け止めようとすることが大事である
批判の有用性
自分が嫌いな人、つまり批判されやすい人から進んで声をかけてみなさい。自分をよく知れる。嫌いなのは相手自身の問題ではなく、自分自身の問題だから。反対派の意見を参考にするために、反対派と肯定派を交えて対話させる。あなたの成長は反対派にかかっている
批判と教育
批判はその事柄についてのやる気を教育している
評価の高浸透性(“連合の心理”)
批判や栄光など、自身の評価に関することに人は敏感に反応し、すぐに自分と関連付けてしまう無意識の心理を評価の高浸透性という
(例) たとえ自分だけに対してでなくても、自分も含まれる遠まわしな批判を感じ取ると、無意識にむきになってしまう
反対の重要性
「ここにいる全員の意見は、完全に一致しているようだ。ならば、これ以上の議論はひとまず打ち切り、次回の会合に持ち越すことを提案したい。そうすれば、異なる意見を思いついたり、何について決めるのかを理解したりするための時間ができるだろう」
正しい判断を導くためには異論が欠かせない[反対の重要性]
緊張の活性効果
適度な緊張や刺激は、警戒信号が全身を回るため、意識・生理・気力が覚醒し、克服しようと努力する効果をもたらす。これを緊張の活性効果という。嫌いな人と一緒にいるとき、スポーツで相手と勝負するときは、甘えが許されないため、双方が緊張し、ゆえに充実し、自分の力を十分に発揮できるといえる。人はバランスを求めて行動しようとするので、このようなインバランスな刺激は緊張をもたらす。過度なインバランス状態は身体に毒だが、適度な反発はむしろ活性化のために必要なことなのである。嫌いな人ともつき合う、いやなこともすぐに投げださない、これも人生には大切なことなのかもしれない
自己の発見
未知の領域の自分の発見や自分自身の再認識は、自分の思考からそれを見つけ出す“自己内的発見”と、対話など、人と接することが発見因子となる“自己外的発見”の二つがある。自己内的発見においてはいつの日にか説明を書くことになると思う。今はそこに譲ることにする
a 自己外的発見
自己外的発見においてはさらに二つの分類がされる。一つは対人や対話において相手との問答のうちから、自己の執着項目や偏見をあぶりだすことで新たな発見となりうる“自己外的対話発見”であり、これは対話が発見につながるということで発見因子は完全に相手との対話である。もう一つは人の言動を客観視したり観察することによって自己発見する“自己外的観察発見”である。これは人に関する心理の発見から自己の深層心理の発見につながる場合のものが多く、発見因子は人の言動である。自己外的観察発見は人の言動が直接的に自分に関わっているものでも、影響があるものでもないため、特殊な発見原理といえる。下に自己外的対話発見について書く
a-1 自己外的対話発見
自己外的対話発見、略して対話発見には、発見因子は完全に相手との対話となっているため、相手の人格、つまり相手と自分の人間関係が大きなキーサクセスファクター(KSF)になるといえる。対話によって発見するためには、お互い本音トークができることがまず前提条件である。壁を作っていたり、嘘をついていたりしていてはただのお世辞トークにすぎない。本音トークができないような人間関係とは、例えば上司と部下のようなインフォーマルな関係や上下のある関係、お互いに好意をもっていて協調性が大事な友人関係などである。本音トークというのはもちろん相手の言ったことを肯定したりすることもあれば否定することもある。第一、相手の意見に反論するという行為は、相手の人にマイナスの反応を示すことであるから、好意の感情をもっている人にはやりにくいものだ。したがって本音トークができるような人間関係とは、親友的人間関係が構築された極めて濃い関係と、嫌いな人である。親友との間にはもはや親密性などはものを言わず、それを超えてお互いを受け入れているという状態になっているので、相手の意見に反論する本音トークがなんなくできるのだ。また、嫌いな人とも、「相手に嫌われるのではないか」というような心配はいらないので、半ば反論することが前提となっている国会の議論のように、自分の思っていることをズバズバ主張できる。相手が反対意見を出しても、それに遠慮なく真っ向から反対し、自分の意見を主張できるのである。つまり、対話発見における自分自身の再認識には、まずありのままの自分をさらけ出せるような相手と本音トークをするということが重要である
否定の根絶
並の人間関係の相手と対話するとき、否定は単にマイナス反応を相手に起こさせるだけの属性である。つまり、このような人間関係の相手に対しては否定の根絶が有用である。否定の根絶は、自分は素直な気持ちをさらけ出すことができないと思われるかもしれないが、実はそうではない。否定をしない=肯定するわけではなく、きっぱりと否定しないことをここでは否定の根絶とよんでいる。否定を根絶するには、低位の提案、可能性転換、同調姿勢などがある
a 低位の提案
できないものでもいきなり「できません」と言うと相手は気分を害す。条件を低位にする、期限を延期にすればできるという提案をするのがいい。「時間が足りないのでできません」ではなく「○日までに伸ばしてもらえばできます」
b 可能性転換
「やったことがないのでムリです」ではなく「はじめてなので、少々手伝っていただければできると思います」
c 同調姿勢
「高いね」と言われたら「そうですね。私もそう思います」
「もう少し安くなりませんか?」と言われたら「今回は難しいのですが、次回のご注文の際には考えさせてください」と、ノーであっても“つなぎ”や“可能性”をつける
切り返し話法
反論する前に一回認めてみる。「○○さんのほうがずっとうまくやってくれるよ」と言われてカチンと来ても、「確かに、○○さんは上手ですよね」
相手が文句や否定をしてきたときはまず一回認める。その上で事実を伝える。そのあとに意見や提案をする。認めたあとにいきなり自分の意見を伝えて対立しようとしない
●6/満足感
満足感が人に与える効果について
満足感の好意効果
/a 満足感の好意効果(意識的である)
相手に満足感を与えると相手は自分に対して好意を抱く心理がある。相手は好意の志向性を自分へと意識的に思うことではあるが、実際は出来事が満足感を与えているのであって、満足感を作り出す出来事を取り計らっている原因である“自分”と、“出来事”の両者において吊り橋効果がはたらいている。それは人の解釈によって意味が異なり、完全に吊り橋効果がはたらいている、つまり無意識である場合には下の(b)の心理のほうがふさわしい
/b 満足感の吊り橋効果(無意識である)
相手が勝手に満足感に浸っている場合、周りにいる人が満足感の原因だと勘違いする。これは無意識に思うことである。自分は相手に満足感は与えていないところがミソ
満足感の承諾効果
結果的に満足感を相手に感じさせれば、次回の要求にも承諾させやすくなる効果がある
満足感の無思考効果
満足感は現状維持を望み、無思考効果を生み出す。これを満足感の無思考効果という
好奇心に拮抗する欲望として、幸福がある。いや、大抵の場合は幸福のほうが勝る。分からないことを知りたいという気持ちはあるが、現状が幸せだったらそれを所望したくないと思う人もいるからだ
<参考:2ちゃんまとめ「鶏「俺達、家畜、人間、鬼畜」鶏「飼蓄な俺達マジ駆逐、Yes」」>
満足感と自己内完結
人は自分の努力に対して後悔をしないように無意識に自分の中に肯定的価値をつけようとする。「頑張ってやりきったんだからもう大丈夫だろう」というように、満足感や達成感を得ようとして自己内完結を行う。これを満足感と自己内完結という。そこには「こうでなくては努力した自分がかわいそうだ」という気持ちからの願望が深層心理に表れている
自己寛容
/a 直接的自己寛容
たとえば、明日やることを今日少しやれば明日やる分は少なくなって楽になる。そのような今までより楽に達成できる場合、その喜びによる気持ちの余裕から、少しは失敗してもいいという自己寛容感が生まれる。これを直接的自己寛容という。たとえ一回失敗したら全部やり直しになるものでも、そのように考えてしまう。この心理の特徴としては、同じ物事に対して寛容になるという直接的な出力であることだ
/b 間接的自己寛容
あるものが叶えられる喜びから、今やっていることがうまくいかなくてもいい(許せる)と思ってしまう。これを間接的自己寛容という。あるものから得られる喜びが全体的な幸福感として行き渡り、幸福感に全身が満たされた状態での思考になるため、気持ち的余裕から他の物事に対しても寛容になれるという心理過程がある。つまり、あるものから得られた満足感は、人間を媒介にして全体に浸透する性質をもっていることがわかる
満足感の分配原理
達成することが目的でも、達成したときに満足感が訪れるのではなく、達成への道を歩いているときにも満足感は感じている。これを満足感の分配原理という
(応用) なにかを阻止したいとき、そこにたどり着くまでの距離を長くすると、十分な満足感を得られ、達成そのものへの意欲が低下する
満足の他者化
自分の心の空しさを満たすものを他人の言動の中に求めるひとは、結局満たされることがないから、いつまでも他人に不満で、かつ心は空しい。そして、いつまでも満足を求めて他人にまとわりつくのである。その典型例が恋愛である
しかしそれは同時にこのようでもある――<他者に拠ることでしか満たされることがない人は、一見するとそのときに十分な満足を得られている場合もあって、そのときは心が不満であるかのようにはみえない。しかしそういう人たちはきまってその満足を生む他者から離れることをしない。それは満足であるがゆえに、その満足を失うことへのおそれが心底に不安として根ざしているからだ>
――
満足の他者化の反対に、自己満足なるものもある。その典型例として、神への信仰、宗教などが挙げられる。そうした人たちは徹底的に自己満足を追い求める。しかしそれは時として自らの想像力を過信しすぎることが自己欺瞞を生んでいる場合がある。このことにかんして、彼らの中でも賢い者はこう反論する――「事実は個々人の内にある。だから私たちは自分が信じるものを事実とするだけだ」。これだけのことを申せる人であれば十分に自分というものがよくわかっていると思う。だから私が彼に言うことはただ一つだけしかない――「自分が信じるものを事実とするもの、だがそれは事実の根拠ではない」
●7/期待
期待はどのような効果をもたらすのか
・期待の原理
全部を見せない。これが“期待”の基本である
・ピグマリオン効果/ローゼンタール効果(“対人的証明”)
教師の期待によって学習者の成績が向上すること。別名、教師期待効果。ホーソン効果。その原理は、人は一般的に関心を持つ人や期待する人の心に答えようとする傾向がある
●8/反復
反復がもたらす効果について
繰り返し強化
どんなことでも、繰り返しやり続ければ少しは小慣れてくる。また、繰り返し学習することで、より無意識的に行えるように行動が習慣化されていく
反復承諾
相手にとって無理な事でも、二回反対すれば気持ちがゆらぐ。二回目からの要求は条件を変えるなどの小細工は必要だが、反復要求は一回だけの要求より承諾率が高まる。これを反復承諾という。「押す」ともいう。特に誠意を強調させて反復要求し続けることを「反復誠意承諾」という。反復承諾による承諾には、誠意が強調されるとか、信憑性がより高まるとか、社会的規範の一貫性がゆらぐからなど、さまざまな要素が相手の中の心理で起こっているために承諾されるものである
(例) 好意のある相手へのアプローチ(告白など)は一回断られても二回三回とさらに押すことで誠意と信憑性が高まり、承諾率は高まる
●9/尊敬
尊敬がもたらす効果について
尊敬の行動抑制効果
人望をほめられたら、不埒な行動には及べなくなる。危険を察知したらほめちぎるといい。またこういう言い方もある
「そんなにお茶目な方でしたっけ(笑)」
関連するものに信頼効果(“相和の形成”)がある
相手を頼りにし、信頼することによって、相手は「よく思われたい」という気持ちを抱く
a 尊敬の相和効果
相手を尊敬する。相手を尊敬することによって相手と仲良くなりたいという気持ちが発生する
●10/合成
合成がもたらす効果について
団体価値[結束強化]
単体がダメなものでも結束することでそれだけで団体価値が付き、単体の持つ欠点を名目として出すことができる。これを団体価値(結束強化)という。ダメなものはまとめてその名目で出したら、もはや使えるものになる。“その名目”で出せるというところが大きな特徴である
●11/筆記
紙に書くことで人にどのような影響をもたらすか
筆記の高整理効果
紙に書くことで原因を明確化し、冷静な思考ができるようになる。これを筆記の高整理効果という
混乱して冷静に判断できそうにないときは、紙に状況を書いてみるとよい。また、悩みも紙に書いてみることが望ましい。最初は気分を害すかもしれないが、数週間経つと気分は前向きになる
筆記と一貫性(“コミットメントと一貫性”)
相手の自己イメージを変えるには、口頭での同意だけでなく、文字を書かせるのも効果的である。これを筆記と一貫性という。ただ書き写すように求めて書かせたものでも効果は発揮される。書き記すのがコミットメントとして効果的である理由は、口にするだけのコミットメントよりも努力を要するからである