好意維持

恋愛とは、非常に閉鎖的な二人集団を成立させることであり、その閉鎖的な壁を厚く高くすることが恋愛関係を永く維持する条件となる。また、恋愛にはお互いが必要とし必要とされる好意のバランス[好意の互恵性(“好意の返報性のルール”)]が大事である

恋愛関係において、お互いの好意を末永く維持していくための心理。関連するものに“好意承諾”がある

接触の好意維持(“非言語コミュニケーション”)

すでに相思相愛の関係の場合、親密性を高め、お互いの好意性を維持するために接触を頻繁に行うのは効果的であるといえる。もちろん自分からの一方的な接触ではなく相手とのバランスも考えるべきではあるが

クロージング効果[あばたもえくぼ戦略]

二人だけの空間(恋愛空間)に、他の人を入り込ませるスキを与えないようにするには、その閉鎖的な壁を内から固めることと、外から固めることが大事である

・内から固める
二人だけの関係を強くすること、つまり、他の人を入れない二人だけの時間と空間を、できるだけ長くもつことである。それと同時に、共通体験を増やし、自分たちだけの共通認識、つまり秘密部分を増やしていくのが効果的である

・外から固める
周囲の人たちに二人の関係を認知させることで、関係を外から安定させることが効果的である。恋人になったら、隠したりせずにすぐに周りに公表したほうがうまくいくといえる。その手段としては、恋人を引き連れて友だちに紹介したり、早期に恋人報告として親に会いにいくことでロミオとジュリエット効果(“希少性”)も期待できる。この心理を包摂するものには、公言と一貫性(“コミットメントと一貫性”)がある

手間の受動性/手間の能動性(“思い入れ効果”)

時間やエネルギーなどの「手間」を自分が負う場合には手間の能動性、「手間」を相手に負わせる場合には手間の受動性になる

人は、特に好意をもっている人(恋人など)に頼られると、「しかたがないなあ。私(俺)がいなくちゃダメなんだから」という心理がはたらく。恋愛関係において手間や面倒は、自分は信頼されているという確認と、自分はその人のためになっているという満足感を与える効果があり、それによって好意性が高まるといえる。手間の能動性は、自分の、相手に対する好意が高まり、手間の受動性は、相手の、自分に対する好意が高まる効果がある

a 時間とエネルギーを使い、またそれをさりげなくアピールする。例えば少し遠いレストランに行ったりとか、手書きのラブレターを書くとか、「タクシーがつかまらなくて困ってるの。迎えに来てくれない?」とか。この時間とエネルギーを相手に使わせることで自分の価値を相手に再認識させる効果がある。手間の受動と能動は一方に偏ることなく、バランスが大事である

関連するものに“ハロー効果”がある

ある人が望ましい特徴を一つ持っていることによって、その人に対する見方が他の面でも望ましい影響を与える心理をハロー効果という。例えば身体的特徴はハロー効果の一例である

(例)

美男美女の場合、その外見からの類推によって性格などの中身にも望ましいものであると期待する傾向がある。人は同姓同士では相手のことをある程度理解できるが、異性同士だと基本的にお互いを「分からない」存在だとみなしている。相手の中身がわかっていれば外見で判断するようなことはしないが、中身が分からないときは外見から中身を想像する傾向がある。つまり、異性同士であれば、「外見がかわいければ中身もかわいいだろう」というふうに勝手に相手の中身も評価してしまうのだ。美男美女はこの勝手な評価に振り回され、勝手に「思っていた中身と違う」と落胆されて破談することは多いと考えられる。したがって、美男美女に限らず相手とうまく恋人関係を維持したいのなら、外見などに関わらず自分の知らない分野については勝手に想像してそのギャップに落胆することのないように、「受け入れる」ということを心がけるのが大切であるといえる

相手の“本当の姿”

恋愛をしている男女はお互い、相手からよく思われたい、自分をよく見てほしい、という感情から印象管理(“非言語コミュニケーション”)に細心の注意を払う傾向がある。そこには、いい意味での精神的な緊張感が存在するが、自分が見せたくないものは隠すという悪い点もある。婚約したり、同棲をしたあとは、その緊張感はだんだんなくなっていく。結婚すれば一番くつろいだ時間を共に過ごすのだから、ずっと可愛い(カッコいい)ままでいろといわれても無理な話。住を共にするということは、現実的な日常が二人の間に入ってくることになるので、つくろったり飾ったりするよりも、毎日の生活をスムーズに進めることのほうに力を注ぐようになる。ここで初めて相手の“本当の姿”が見えるようになる。よく「恋人のときと変わってしまった」と言う人がいるが、しかしそれは結婚して彼(彼女)が変わるのではなく、恋人時代にホンネを隠していただけかもしれない。結婚してから悔やまないように、結婚を決意するまえにできるなら同棲をして相手のホンネを受け入れる準備をしたほうが望ましいといえる

好意の互恵性(“好意の返報性のルール”)

人には好意をもってくれる相手に好意をもつという返報性のルールがある。これを好意の互恵性という。恋愛にはお互いが必要とし必要とされる好意のバランスが大事である。この好意のバランスが悪いとき、相手への好意が大きいときは互恵性を確認しようとし、相手への好意が小さいときは無関心や自然破局に至る。ここでは互換性を確認しようとする人の心理について掘り下げる

/a 好意のバランス

好き嫌いというのは、バランス関係が大事であるため、例えば自分だけが一方的に好きでいる状態は、とても不安になるものである。好きになったら、相手にも好かれないと気持ちが落ち着かないし、満足できない。自分が好きになればなるほど、相手の気持ちを確かめずにはいられない。そこで、わかりやすい愛の証拠を得ようとして、相手の言葉や行動、プレゼントなどから判断することになり、そしてそれが確認されると相手のことをさらに好きになり、それがまたさらに相手の気持ちを確かめたいという欲求を高めるのである。女性がプレゼントを欲しがるのも、女性はそのプレゼントを彼からの愛の証だと考えるからである。女性は男性がどれだけ工夫をこらし、労力(お金など)をかけたかをアピールすることによって、愛の重さを感じたいのである。これは無意識に互恵性を確かめようとしている行為だといえる


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